福島県相馬市において、東日本大震災からの復興状況について視察させていただきました。足利市は震災当時から市の職員を長年にわたり派遣させていただいた経緯もあり、相馬市とは一定の友好関係にありました。

まずは市役所庁舎を見学いたしました。震災時に多くの救援物資を保管・管理する場所が不足したことを反省材料とし、通常より廊下を広く確保したり、地震に強い免震構造にしたり、備蓄倉庫を兼ねていたりと災害を意識した設計となっていました。震災当時の状況が記録されているホワイトボードが庁議室に残されており、当時の生々しい緊張感を物語る時の証人を前に言葉を失う一幕もありました。

震災当時のまま残されているホワイトボード

次に「相馬市防災備蓄倉庫」を見学いたしました。見学前に当該地域の消防団である第9分団の殉職された分団員10名をたたえる顕彰碑に、消防団員関係議員で献花をさせていただきました。国の復興交付金約3億円を投入し、平成25年に完成した倉庫には自動管理された多くの備蓄品が保管されており、いつどこで災害が起きても物資を輸送できる体制が整っていました。先日の西日本豪雨の際も広島県総社市などに物資を供給したそうです。震災の体験から電気のいらない石油ストーブや、車の入れないエリアで活躍したリアカーなどが備蓄してあった点が印象的でした。

倉庫前にはヘリも発着できる広いスペースが

自動管理された電動ラックが並ぶ

 

次に「慰霊碑・伝承鎮魂記念館」を見学しました。震災犠牲者の慰霊と震災の記憶の伝承のための施設で、平成26年に完成しました。こちらでも献花をさせていただきました。展示されていた持ち主の分からない数々の写真が、我々に語り掛けるメッセージに心を動かされました。こういった施設は、どういった災害や戦災においても必要であることを、再認識いたしました。その後、各地の災害公営住宅(長屋や戸建て)や水産加工施設、子どもアートメゾンなども見学させていただきました。

慰霊碑の目の前には穏やかな海が広がる

 

全体の現状から見た印象として、公共施設や住宅、防潮堤、道路といったインフラなどの整備はかなり進んでいる印象を受けました。おそらく多くの方が相馬市の状況を目の当たりにすると同様の印象を受けると思います。しかし実態を聞くと、若い世代の流出による学力の低下や風評被害、差別やいじめ、心の問題など目に見えにくい課題はまだまだ山積しているようで、時の流れと共に顕在化してくるものもあるようです。

こういったご縁で相馬市と交流ができたわけですので、足利市としても協力できることは積極的に行っていきたいと感じました。また、直接災害を経験された自治体だからこそ持ちうるノウハウを、貪欲に獲得させていただく「したたかさ」も持つべきだとも感じました。