■本当にコンビニ受診は増えるのか
今までの国の方針や、足利市の議会での答弁では「現物給付を拡大すれば、容易に病院を利用するコンビニ受診が増え、医療費が増大する。」といった主張が繰り返されました。乳児や未就学児であれば急な体調変化も多く、医療サービス需要はもともと高いので、家計の負担が減るのであれば、受診が増えることは考えられます。ですが、小学生や中学生になると体も丈夫になり、医療サービス需要はもともと低いのではないでしょうか。

名古屋市立大学大学院の澤野孝一朗准教授も、医療費無料化による医療サービス需要増加について、過去の研究を事例に「小学生(7歳から12歳)については明確でない。またその効果は、非常に小さい規模である。」と結論付けています。
つまり、「現物給付を中学3年生に拡大してもコンビニ受診が増えると断言できない」わけであります。

 

■議論を深め子育て環境改善の新たな一歩を
国や周辺自治体が子ども医療費の問題に本格的に力を入れている今こそ、「現物給付」を近隣他市並みの中学校3年生に拡大すべきだと考えます。結果的に本市の子育てに関するイメージアップや、転出人口減少にもつながるはずです。
一方、拡大により約1億7000万円の財政負担も見込まれます。しかし、前述したように市の負担も随時軽減(※5)されています。

塩崎厚生労働大臣と「#8000」のキャラクターに採用されたアンパンマン

また人口減少が進むなか、限りある財源をどの世代にどれくらい投資していくか、財源の世代間配分問題も議論しなくてはいけません。これまで人生後半に重点投下されてきた財源について、本格的に議論する時期に来ていると考えています。様々な事業や施設にかかる経費を見直して財源を捻出することも検討すべきです。
また、医療費増加を抑制するため、家庭医療に関する子育て世代向けの講座や啓発も有効です。小児科医や看護師などの医療専門職が相談にのってくれてくれる、小児救急電話相談事業「♯8000」の活用も推進したいところです。不急不要な医療費を削減することもセットで検討しなくてはいけません。
そして、国や県にこうした基礎自治体が無益な自治体間競争にさらされている現状を、継続して訴えることも忘れてはいけません。
持続可能な子育て支援事業を確立するため、この問題についてはこれからも粘り強く議論をしてまいります。

※5…H27年・H30年の制度改正で約3490万円軽減。

出典:厚生労働省ホームページ (https://www.mhlw.go.jp/photo/2016/04/ph0406-01.html