室町幕府を開く足利尊氏を輩出した足利氏は、足利義康を祖として代々足利の地に居館や、寺院を整備してきました。

足利市内の浄土庭園を持つ寺院(google map参照)

足利氏の特徴として他に類を見ないのが、京都の平等院や平泉の毛越寺の様な「浄土式庭園(※1)」を備えた寺院を多く建立していることがあがられます。しかも2代義兼から義氏、泰氏、頼氏と4代続けて建立しており、当時の財力が鎌倉御家人のトップクラスであったことを示しています。

足利市教育委員会資料に一部加筆

今回の法楽寺は3代義氏の建立で、文書や絵図等に池の存在が示してありました。過去2度の火災に見舞われるなど、遺構が少なく確固たる証拠が見つかっていませんでした。そこで平成29年度から発掘調査が行われ、今回は園池の州浜や埋め立ての経緯、当時の遺物などが発見されました。これにより法楽寺に浄土庭園があったことが確認され、今後の研究に大きく寄与することとなりました。

発見された五輪塔と板碑の破片

3期に渡る園池の変遷が見られる


これまで義兼の樺崎寺、泰氏の智光寺と浄土庭園の発掘が行われてきました。リソースや予算、関係各位のご理解もありますが、今後は未調査である頼氏の吉祥寺も発掘を検討すべきと考えます。
更には、浄土庭園の魅力や価値、あるいは足利氏をはじめとした東国武士による歴史や文化を伝える仕掛けも検討し、歴史と文化財を「活かす」行政展開を期待したいところです。


※1)浄土庭園・・・
平安時代から鎌倉時代にかけて築造された日本庭園の形式。仏教の浄土思想の影響を大きく受け、極楽浄土の世界を再現しようと金堂や仏堂をはじめとした寺院建築物の前に園池が広がる形をとっている。