その1であげた理由をひとつひとつ見ていきます。

1.働き盛り世代の転出防止につながる
20代から30代の働き盛りの世代は、一生のうちで最も家を買う可能性のある世代です。この世代がどこに家を構えるのかという問題はまちにとって、安定した税収の確保と経済の維持に直結する重要な問題です。職場、家族親族、生活環境など様々な要因を総合して、家を建てる場所を決めます。20年前に比べ、世帯当たりの年間所得が約100万円も低い現在において、このような経済的支援制度が果たす役割はますます大きくなっています。

2.移住促進事業の決め手になる
先ほどのお話のように所得が少ない現在の20~30代にとって経済的な支援は大変助かります。しかし、人口が減少している自治体間の補助金競争になることは、日本全体から見れば望ましいことではありません。そこで東京などの人口集中エリアからの移住政策と密に連携を取ることが重要になってきます。「足利は魅力的だけど家を買うほどのお金がない」「足利に素敵な古民家があるけどリフォームが高くつきそう」など、もう一歩で移住をしてくれるような人たちへの最後の一押しになるはずです。また、合計特殊出生率の低い東京(1.17%)から足利(1.41%)へ来ることで、生まれる子どもも増えていきます。

3.まちのブランディングにつながる
栃木市が良い例です。2017年版「住みたい田舎ベストランキング」の2部門で1位を獲得した理由の一番最初にはこう示されています。
「住宅取得への助成など移住支援策が手厚い」
住宅取得支援が住みたい田舎のブランディングに直結しているわけです。(それだけではないですが)
人口減少が周辺他市よりも進んでいる足利市は、優先して「若い世代が住みやすいまち」としてのブランディングを構築していく必要があります。

4.空き家問題の解消につながる
足利には約5500戸という多くの空き家存在します。また、かつて繊維産業で財を成した多くの「旦那衆」が、競うように立派な屋敷を建てたという特色もあります。そのため現在、使われていないが歴史があり価値も高い古民家が、その維持の困難さ故に破却の危機に瀕しています。そんななか、全国的に古民家再生やリノベーションが注目を集め、足利でも利活用が進んできました。そこで、古民家や空き家利用の障壁である改修のための経済的負担を軽減するためにも、住宅リフォーム支援事業が必要とされています。
古民家・空き家は足利の大切な資源です。この資源の魅力を伝え、利活用を促す。両面から空き家問題の解消につなげていくべきだと考えます。

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空き家イメージ

5.近居や同居を推進することで合計特殊出生率を上げることができる
国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査(夫婦調査)」によると、親との居住距離が近い夫婦ほど出生する子ども数が多くなる傾向があることが指摘されています。実際私も近居ですが、いざ何かあったときに頼りになるのは家族です。急な病気、仕事のトラブル、外出など、何かあったときに子どもを家族親族で見守れる体制は心強いです。誰も頼れない環境では「子どもは一人で手一杯」となってしまう気持ちも良くわかります。そういった意味で、この近居や同居を推奨する政策は大変効果があると考えます。

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別居に比べ近居、同居の合計特殊出生率は高い

 

以上5つの理由から、『新築住宅取得・住宅リフォーム支援事業』を復活すべきだと考えます。より効果が上がるように、近居、同居、移住者、子どもが多い世帯などに対して補助額を増額したり、リフォームに関しても築50年以上の古民家、景観上重要な空き家などを優遇したりするなど、制度設計は細かく行うべきだと考えます。

またPRも重要です。足利では現在、シティプロモーションと移住政策を積極的に行っています。移住体験ツアーで対象となる古民家を見学して補助制度を紹介したり、空き家バンクを導入して移住政策とリンクさせたり、所有者の方への啓発を行うなど、様々な工夫が考えられます。

大切なのは制度をつくることではなく、つくった制度を必要としている人に的確に伝えること。そして、使いにくかったり反響が悪い場合には見直すといったPDCAをしっかり回し、移住者増加、転出者減少という目的を達成することです。

今後もこの制度については調査・研究を行い、議会を通して提言し続けます。

 

【参考】→平成28年第3回定例会(http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=873