前回は熊本地震で損壊した宇土市役所の例をお伝えしました。実は足利市の庁舎配置も宇土市に近いものがあります。本庁舎に隣接し昭和27年竣工の別館、道を挟んで昭和44年竣工の教育庁舎が建っています。すべて耐震化はされておらず老朽化が進んでいます。
宇土市同様、どれか一棟でも損壊すれば、倒壊の際に瓦礫などが衝突し被害を受ける可能性があるため、「立入禁止」となることが予想されます。そうなると本庁舎、別館、教育庁舎で行われている業務が全て正常に行えなくなります。
また、連日多くの市民が来庁し、本庁舎だけでも約600人の職員がいる施設が損壊した際の人的被害は相当なものとなります。
更に、本庁舎は災害時の対策本部となるため、使用できない場合、あらゆる災害対策に遅れが生じ、市民の命を守れなくなる可能性もあります。

足利市庁舎等の竣工と耐震性

近接する足利市の庁舎

これだけ危険な状況にある庁舎の更新について、足利市では積極的な議論はされてきませんでした。それは、「財政状況が厳しいので職員や市長、議員が使う庁舎は後回し」といった空気感があったからではないかと感じています。足利市の場合は、子どもたちが使う小中学校校舎を最優先で耐震化してきました。その完成は近隣市でも一、二を争うほどです。しかし、市民会館、クリーンセンター、斎場、消防本部など多くの大型公共施設の更新を前に、市役所の議論は後回しにされてきました。市長選挙でもあまり争点にはされてきませんでした。一般的に庁舎更新問題は政争の具とされる傾向があり、選挙前に建替えなどを訴えると「財政が厳しいのに建替えなんてけしからん!」とセンセーショナルに攻撃されることもあります。

しかし、市民の命と財産、生活を守る責任を負う我々議会と、市長をはじめ当局が、この問題を議論しないで良い理由にはなりません。危機管理の観点からあらゆるリスクを想定する事は極めて重要です。責任ある立場として、「想定外だった」「検討していなかった」ということにならないように、議論を活発かつ早期に行うべきだと考えます。

今回の一般質問で、上記の様な提言をしたところ、市長や総務部長から、

「庁舎建替えの検討を進めていく必要性を強く認識している」
「市民や市議会の意見を聞きながら、議論を進める」
「建替えについて議論を加速させていくことが重要」

といった答弁をいただきました。

しかし、本市の公共施設更新にかかる費用は膨大であります。建替えありき、大規模改修ありきで議論するのではなく、状況を客観的に見て柔軟に議論していく姿勢が重要と考えています。そのために、議論の基礎資料となる調査や見積りなどを早急に行っていただきたい旨も提言いたしました。参考までに現状で分かっている耐震工事などの事業費は以下です。

■耐震補強工事費見積(H25年時点)
本庁舎 18億円(※免振の場合20億円)
別館 2.6億円
教育庁舎 5千万円
■近年の庁舎建替え事業費
小山市 約100億円
佐野市 約70億円

現在、首都直下型地震、南海トラフ地震が30年以内に70%の確率で発生すると言われています。批判を恐れ、この問題を放置し、多くの人命を失い、市民生活に多くの不便をきたすことの無いよう、勇気をもって議論を進めていきたいと考えております。


【過去議事録・録画】
□令和4年第2回定例会(市役所庁舎)
https://ashikaga-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=340

【関連記事】
□平成28年熊本地震,豪雨災害 震災記録誌 越えていく 概要版
https://www.city.uto.lg.jp/d?q=2976dfc87b173a76b6c9711cd399be18.pdf
□【足利市公共施設等総合管理計画】について~その1~
http://sueyoshi-toshihiro.com/?p=678
□【足利市公共施設等総合管理計画】について~その2~
http://sueyoshi-toshihiro.com/?p=690
□【足利市公共施設等総合管理計画】について~その3~
http://sueyoshi-toshihiro.com/?p=697
□【全員協議会】施設カルテの公表について
http://sueyoshi-toshihiro.com/?p=1276
□【全員協議会】大型公共施設更新に向けた財政指針の策定について
http://sueyoshi-toshihiro.com/?p=1826