第5回は市民の防災力についてです。これまでは行政側のいわゆる「公助」のお話でしたが、今回は市民自らどのように災害に立ち向かうかという「自助」「共助」のお話です。

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実際の災害現場では自助・共助が重要に

これは有名なデータですが、阪神淡路大震災の際にどのように生き埋めや閉じ込めから救助されたかというものがあります。イメージでは消防や自衛隊が救助をしているように思うかもしれませんが、実際には自力や友人など「自助」「共助」が97.5%であることがわかります。つまり、大規模災害のときには救助要請が殺到し、「公助」が間に合わないため、いかに自分たちで命を守るかが重要になってくるということです。

実際に足利市民は144,000人いますが、市の職員は1,100人しかいませんので全て公助に頼ろうとすれば、職員一人当たり131人を救いに行かなければいけません。極端な話かもしれませんが、私が言いたいのは「自助」「共助」が大前提だということです。

そんななか昨年の台風19号から我々が学んだ課題とその対策について、いくつか提言させていただきます。

■末吉の考え
1.防災訓練の強化
防災に対する意識を高め、災害に強い市民を増やすためには何といっても訓練が必要です。足利市では各小学校区でおおよそ5年に1度「合同防災訓練」を実施しています。そこでは水の入った消火器を使った消火訓練、AEDを使った救命訓練、煙体験や地震体験などが行われます。長く続いているものなので、若干形式化している部分もあるため、より実践的に強化すべきと考えます。例えば水害が予想されるエリアでのゴムボートを使用する訓練や、土砂災害警戒区域ではてこを使った救助訓練、避難所を運営するHUG研修などが有効と考えます。
あとは、この訓練にいかに多くの幅広い方に参加していただくかも重要な課題です。

小学校区で行われる合同防災訓練

2.自主防災会の強化
自主防災会は地域住民が協力して「自分たちの地域を自分たちで守る」ために立ち上げる組織のことです。平常時には災害に備えた取組を実践し、災害時には被害を最小限にくい止めるための応急活動を行います。足利市では全ての自治会(222地区100%)に組織されています。しかしそのほとんどは自治会が自主防災会を兼ねています。結成から20~30年経過しており、一部では役員や担当が引き継がれていない、年間の活動がほとんどない、規約を見たことがないなど、こちらも形骸化の課題があります。まずは市内の自主防災会の実態を把握し、課題を洗い出して改めてその強化策を市民と共に検討すべきと考えます。

3.地区防災計画の策定
地区防災計画は地区居住者等が自発的に地域に応じた防災活動などを定めた計画です。行政などのトップダウン型のものと違い、より地元の事情を理解している住民による実践的かつ現実的な内容となります。令和2年度は市内で1カ所モデル地区を定めて策定するとのことですが、先ほど述べた通り、市内には他に221地区あります。このペースではとても間に合わないため、推進役となる人材を育てるため、モデル地区の他地区の方をオブザーバー参加させることが有効と考えます。また、防災士の資格を持たれている方の協力も重要な推進力となるはずです。

4.一時避難場所の見直し
一時避難場所は万が一の場合に、少しでも安全が確保できる公共の場所や、集合して安否を確認するために一時的に集結する場所のことです。足利市の場合は地震を想定したものがほとんどで、水害の際の一時避難場所を別に設ける必要があります。これらは自主防災会が指定しますので、それを促す必要があります。


以上、4点述べましたが、まだまだやれることは沢山あります。災害に強いまちづくりの第一歩は「災害に強いひとづくり」です。今回の台風被害を機に、足利市全体の防災意識が変わるきっかけとすべく、できることをしっかりと提言していきたいと思います。


■過去記事
【台風19号の経験を生かせ!災害に強いまちづくり】について
その4 消防組織体制編
その3 危機管理体制編
その2 ハード対策編
その1 情報編