第2回はハード対策です。ハード対策とは一般的に「なんらかの構造物による被害軽減手法」と言われます。河川に堤防を築いたり、堤防を高くしたり、ダムや砂防ダムを整備したり、遊水池を作ったりといったものです。また、今回注目された水門で言えば、排水機場やポンプなどの整備がそれにあたります。

□関連する末吉の一般質問録画配信
http://u0u1.net/XI0O

足利市に限らず全国のハード対策が完成しているわけではありません。堤防整備ひとつとっても河川は総延長が長いため、膨大な事業費と時間が必要です。今回も整備中であった名草川(H44年度完成予定)や、佐野市の秋山川(H43年度完成予定)が氾濫しました。ダムについても八ッ場ダムが話題になりましたが、そこで雨水を溜めることができなければ、ダイレクトで川に流れ込んでいますので、水位の想定や対応は困難を極めたことは容易に想像できます。こちらも時間とお金がかかります。また、計画通りに整備しても氾濫した河川が散見されました。こうしたことから「ハード対策で全ての災害に備えることは不可能」という考えが一般的となっています。
□栃木県安足土木事務所資料→http://u0u1.net/YwIo

また、渡良瀬川の重要水防箇所となっている中橋は、その接続部分の堤防が計画高よりも低くなっています。今回は10月12日21:00の段階で橋を通行止めにして、大型土嚢による水防工法が実施されました。
□重要水防箇所→http://u0u1.net/vNat

大型土嚢で水防活動を実施した中橋

国土交通省渡良瀬河川事務所のサイトに掲載されたマップ

今回注目された水門ですが、他にも樋門・樋管があります。こちらは堤防を分断せずに穴をあけたものになります。ちなみに市内一級河川には50の水門等があるそうです。バックウォーターを防ぐため、閉じられた水門により支流や水路の水があふれだし、冠水が起こりました。今回水門等があったエリアは冠水被害も多い傾向にありました。水門の開閉は管理する国や市が直接開閉する場合と、業者や地元の方に委ねている場合があります。

水路の水が渡良瀬川に流れ込む朝倉樋管

その外にも排水溝や下水の流量、貯水池の容量などから雨水を処理しきれないことで起きる「内水氾濫」に対応するハード対策も検討しなくてはいけません。また土砂災害に対しては、危険な地域で擁壁工事や落石防止工事が必要です。

■末吉の考え
1.重要水防箇所を含めた治水事業などの要望活動強化
渡良瀬川の中橋をはじめ、市内には氾濫の恐れがある「重要水防箇所」と呼ばれる国が指定した場所が複数あります。氾濫を免れた渡良瀬川や今回氾濫した旗川などの一級河川の整備については、国や県の事業であります。市町としては整備の一日も早い推進要望が中心となります。行政だけでなく、議会、地域が連携して声を上げることも重要です。議会として意見書を議決することも有効と考えます。

2.水門・樋門への排水機場整備やポンプ、吹鳴装置、赤色灯の設置
水門近くでの被害を減らすために、支流の水を本流に流すために排水機場の整備や簡易ポンプの設置が有効と考えます。ポンプでは焼け石に水かもしれませんが、水量によっては床上浸水を床下に留めたり、避難の時間を稼いだりすることもできるかもしれません。排水機場については多額の事業費がかかりますので、国や県に要望することも必要です。
また、開閉状況をサイレンで知らせる吹鳴装置や赤色灯の設置も、情報伝達には有効と考えます。

姥川の水を矢場川に流す排水機場

以上のように、基礎自治体としては大きな事業であるハード対策は直接できることに限りがあり、国や県への要望が中心となります。とはいえ声を上げないより上げた方が事業として進みやすくなるはずですので、根気強く続けていかなくてはいけません。
次の災害がハード対策の完成を待ってくれるわけではありません。多額の事業費を使わず基礎自治体でもできる「ソフト対策」をいかに充実できるかが、被害を最小限に食い止めるカギになるはずですので、そちらにもしっかりと注力して参ります。

つづく...