■子育て世代の声
多くの子育て世代が不満を抱く「こども医療費がタダじゃない」すなわち、「現物給付が他市は中学3年生までで、足利市は未就学児まで」であるという格差は、実態としてどれくらいの不便があるのでしょうか。
まずは手続きの煩雑さです。画像は医療費を振り込んでもらうために必要な「こども医療費助成申請書」です。太枠の中のみですが、これを保護者と医療機関が記入し、捺印し、領収証を添付して提出します。病院や薬局ごとに別の申請書が必用なので、小児科と皮膚科で別の病院にかかり、それぞれ別の薬局で薬を処方してもらえば合計4通作成することになります。提出も郵送か窓口に直接なので、これも手間がかかります。共働きでがんばっている多くの家庭にとって、こうした手続きは非常に面倒に感じられます。「少額の医療費のときは面倒で申請書を提出しなかった」というご指摘を何度も受けたことがあります。
次に実質無料ではないということです。病院ごとに毎月500円の自己負担を支払わなくてはいけませんので、3ヶ所診療を受ければ1500円の負担となります。「無料って言うけど実際は無料じゃないよね」というごもっともなご指摘もいただくことがあります。

こうした点を考えますと、周辺自治体との格差を肌身で感じ、不満を募らせていく子育て世代の気持ちがよくわかります。足利市民が「給食費無料化」のような、突出した子育て支援を望んでいるのであれば問題があるかもしれません。しかし、この点については足利市民だけが格段に低い子育て環境にあることは事実で、それに対し「他市並みに」と声を上げることは正当な主張だと考えます。

 

こども医療費助成申請書

 

 

■国や周辺自治体の動き
私は平成27年9月にこの問題をはじめて議会で取り上げ、昨年12月にも再度議論いたしました。私以外にも複数の議員が「現物給付を拡大すべき」旨の主張をしてきましたが、市は大きな動きは見せませんでした。この前後に国や周辺自治体でも様々な動きがありました。
□過去の議事録(H27.9)→ http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=468
□過去の議事録(H29.12)→ http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=1550
 

具体的な動きを簡単にまとめておきます。

平成22年 栃木県が医療費無料上限を小3から小6に拡大
平成26年 佐野市が現物給付上限を中3に拡大
(ほかにも前後して下野市、鹿沼市、壬生町などが中3に拡大)
平成27年 栃木県が現物給付上限を3歳から6歳に拡大
(市負担2790万円軽減※2)
平成30年 国がこども医療費現物給付のペナルティ(※3)を一部廃止
(市負担700万円軽減※4)

※2…平成27年3月議会民生環境水道常任委員会報告より
※3…いわゆる「コンビニ受診」が増加し医療費を増大させるとして、現物給付を行う自治体に対し、国民健康保険の療養費等国庫負担金という補助金を減額する措置を実施していた。
※4…平成29年9月議会一般質問答弁より(平成28年度決算ベース)
 
このように全国的に子ども医療費や現物給付の範囲を拡大し、子育て世帯の負担軽減を進めています。更に、平成30年のペナルティ廃止に見るように、国も出生率改善のためにも現物給付の必要性を一定程度認め、これまでの姿勢を転換しました。
 
つづく...