岡山県備前市の「日本遺産旧閑谷学校」について、備前市世界・日本遺産推進室と、閑谷学校顕彰保存会の方にお話をうかがいました。閑谷学校も足利市の足利学校とともに日本遺産「近世日本の教育遺産群~学ぶ心・礼節の本源~」に認定されています。日田市の咸宜園同様、4市連携を進め、日本遺産認定というチャンスを生かしていくために、備前市の取り組みと閑谷学校の価値を学ぶことにしました。

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閑谷学校講堂は国宝

 

閑谷学校は1670年に当時の岡山藩主池田光政が、武士だけでなく庶民も学べる学校を作るべく創設しました。現在の建物が完成したのは1701年で、当時とほぼ同じ姿で現在に残っています。講堂は国宝、その他聖廟や門なども国の重要文化財に指定され、学校全体が国指定特別史跡となっている大変価値のある文化財です。

閑谷学校の管轄は岡山県で、敷地内に岡山県青少年教育センターが設置されています。現在は閑谷学校顕彰保存会が管理、運営を委託されています。儒学を教えていたことから、論語を教えていること、孔子を祀っていること、「釈菜(せきさい)」という足利学校の「釈奠」に似た行事が行われていることなど、足利学校と共通点が多いのも特徴です。

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金色に輝く孔子像は江戸時代の作

 

さて、日本遺産に認定されてからの備前市の動きは、看板や懸垂幕、メディアでの広報、ボランティアガイド養成、映像制作などが中心です。日本遺産魅力発信推進事業の主体は備前市になりますが、閑谷学校の管理は岡山県であるという部分で今後の活用に関して、より綿密な連携が課題のようです。

 

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隣接する旧閑谷中学校は登録文化財で資料館として残されている

 

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聖廟前の楷の木

 

また、驚いたのは年間の来場者数です。国指定特別史跡であり、国宝や国指定重要文化財の建造物を多数所有するにもかかわらず、9万人前後の来場者で日本遺産認定後も約3千人しか増加していないとのことです。特別史跡ではなく、国宝建造物もない足利学校がおおよそ16万人であることを考えると少ない印象です。交通アクセスの不便さなども理由として考えられますが、まだまだ多くの集客を見込める文化財だと感じました。

また、課題として聖廟前の「楷の木」の紅葉が大変有名で、その紅葉の具合で来場者が大きく増減するそうです。

とは言え、何をきっかけにしても来てもらって、歴史の深さ、まちの魅力を知ってもらうことに繋がること第一です。そこから更に日本遺産つながりで、足利市や水戸市、日田市に行く流れができるような工夫が、今後さらに求められると感じました。

 

今回視察をした2か所(閑谷学校、咸宜園)と足利学校に共通する課題としては、「日本遺産」というブランドをまだ生かしきれていないし、そのブランドがまだ周知されていないということだと感じました。

こちらは自治体だけでなく文化庁、県ともうまく連携していく必要があると思います。それも含めて日本遺産認定と4市連携の機会を最大限に生かした観光政策、文化政策を研究していきたいと思います。