足利市役所の北側には、道路を挟んで「水道庁舎」が独立した建物として運営されています。水道庁舎は昭和33年に完成し、その後4階部分を増築しましたが、老朽化(※1)が進んでいます。また旧耐震基準ですので、大きな地震に耐えられない可能性があります。そこで、建替えや大規模改修が課題となっていました。

■施設カルテ/http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/uploaded/attachment/46567.pdf

一方、栃木県では「栃木県公共施設等総合管理基本方針」や「県有財産総合利活用推進計画」に基づき、国や市町との連携を模索し、地方行政庁舎の有効活用を推進していました。

そして今回、足利市と栃木県が協議を重ね、水道庁舎内にある足利市上下水道部が、栃木県足利庁舎の一部を借りて移転することが決まりました。今年5月から賃料やレイアウトなどの基本事項の協議が開始され、9月に大まかな方向性が示されました。移転時期は2019年10月を予定しています。現在の水道庁舎は2020年以降に解体して、本庁舎の駐車場として整備する方針です。(※2)
■記者発表資料/http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/uploaded/attachment/47171.pdf
移転前と移転後の比較は以下の通りです。

水道庁舎
(現状)
→ → 栃木県足利庁舎
(移転後)
昭和33年 完成年 平成6年
2454㎡ 建物の延床面積
1824㎡
1階一部~3階
使用する延床面積 760㎡
1階一部及び2階

さて、今回の移転にはこれからの公共施設のあり方を考えるうえで、重要なポイントが二つあると考えます。

■ポイント1 延べ床面積が縮充されている
今後、人口急増時代に過剰に整備された公共施設を、今ある数、今ある規模で残すことは不可能であることは多くの方の共通認識になって参りました。そんななか、これからの公共施設の「本当に必要な規模」を検討し、最低限必要である面積にまで縮充したことは高く評価できます。
当該課からすれば、自分たちの職場を狭くされることに対して抵抗感があります。それはその施設を使用している団体や組織も同様です。事務室の省スペース化、稼働率の少ない部屋の削減などの議論を重ね、1824㎡を760㎡にできました。この成果は必ず、今後の市内公共施設整備の手本となるはずです。

■ポイント2 今までと違う発想で整備を検討した
市によると県有施設をフロアごと間借りすることは県内初だと言います。「市の行政サービスを行うのは市の施設」というこれまでの常識を覆し、県の施設を間借りする。これまでになかった発想です。県税事務所が佐野県税事務所に統合され、空きスペースができていたという幸運が重なったのかも渡りに船でした。

いずれにせよ、県のもの、国のもの、市のもの、民間のものという垣根を超えることで新たな公共施設マネジメントの展開が期待できると考えられます。

記者発表資料

以上のポイントからも、今後の公共施設マネジメントの手本となり、新たなヒントを与えてくれる取り組みだと感じています。これから先、多くの公共施設に対してこのような厳しい議論が迫られます。決して他人事と考えず「足利全体の未来に関わる問題」として捉えることが重要です。

※1…H30年で築59年経過
※2…駐車台数は現在100台から解体後168台になる予定