みなさんは『地域おこし協力隊』をご存知でしょうか。
平成21年に導入された総務省の事業で、都市部に生活をする若者を中心とした方々に、地方都市へ移住していただき様々な地域おこし活動に専念していただく制度です。隊員には国から活動費を含め上限年額400万円が、国の特別交付税として支給されます。期間は概ね3年間です。
 
そんな地域おこし協力隊を足利市でも導入することになりました。
昨年3月に一般質問を行った時点では平成29年度、つまり今年からの導入を目指すとのことでした。
 
栃木県内には45名(H28年2月時点)の隊員がおり、特に多いのは大田原市の14名です。黎明期から導入をしている日光市では、隊員が足尾の歴史をまとめた出版物を発表したり、益子町では「土祭(ひじさい)」という人気イベントの企画立案に携わったりしています。
キャッチーな話題ですので、
「○○市に▲▲名の隊員が移住!」
「○○町の隊員が観光マップを作製」
なんて見出しでメディアには頻繁に取り上げられます。
 
国は全国にいる1511名(2014年)隊員を、2016年に倍増させようと目標を定め、創業支援の拡大や制度の柔軟化をはかっています。 

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地域おこし協力隊のサイト

 

 

 
さて、その地域おこし協力隊の効果と課題についてです。
 
■効果
 1.地域力の維持・強化を図ることができる
 2.地域の活性化と産業や観光による交流人口の増加
 3.隊員自身を含めた移住・定住の促進など
 
■課題
 1.3年という時限制度の限界(持続可能でない、隊員が自立できないなど)
 2.自治体シーズと隊員ニーズのミスマッチ
 3.住民・コミュニティと隊員のミスマッチなど
 
地域やコミュニティ、あるいは役所に入って課題を一緒に考えてくれる。
人が集うイベントを立ち上げる。
新商品を開発し売り上げを伸ばす。
それらの過程でまちを気に入り定住してくれた。
そんな成功例も各地で現れています。実際に任期終了後、隊員の59%が同じ地域に定住しているようです。(総務省)
 
担い手が少ない農村地域や、祭りを維持できないコミュニティに「東京から若者が来て、新しい風を吹かせてくれるぞ!」などと過剰な期待を持たれてしまい、プレッシャーに押しつぶされてしまう。
自治体に地域おこしを丸投げされて何をしていいかわからない。
コミュニティに入り込めず何もできない。
といったトラブルや問題も出ているようです。「地域おこし協力隊」で検索すると、様々な事例を見ることができます。
 
そこで、一般質問でも行った末吉なりの提言を記しておきます。
 
●本当に地域おこし協力隊を必要としている最適な分野を見つける●
この制度自体、まだまだ一般的ではありません。行政内部ですらその言葉を知らない方もたくさんいるはずです。まして、高齢化が問題になっている地域コミュニティであれば推して知るべしです。
まずは知ってもらために、制度の効果や課題を積極的に説明会などで伝えることが必要です。そこではもちろん、成功例や失敗例なども包み隠さずお話しするべきでしょう。また、現役隊員からのお話しも聞けるとなお良いでしょう。
その結果、本当に必要としているコミュニティや分野を浮かび上げることができます。隊員に来てほしくないところに行っても悲劇を生むだけです。
 
●足利らしい魅力ある仕事を創出すべき●
総務省が隊員倍増を計画している以上、今後は人材獲得競争が進んでいきます。技術や経験が豊富で、情熱を持った人材を獲得するためにも、足利市の募集内容に魅力を持たせる必要があります。
足利でしかできない地域おこし。例えば銘仙・和菓子・論語などを活用した観光振興、人手が不足している歴史文化財の保護・活用、名草の蛍・渡良瀬川などの自然の保護など、魅力的な資源はたくさんありますので、魅力ある仕事を創出することができるはずです。
 
この制度は国の予算ですので、自治体から見ると都合のいいばら撒き制度と捉えることもできます。
しかし、隊員になろうとする方の中には安定した仕事を辞めてまで、地域のために働こうと考える方々もいらっしゃいます。月収にしたら16万円程度です。それでも地域のためにがんばりたい、そういった方々の決意に失礼のない仕事、計画、受け入れ態勢を整えることは自治体の責務だと考えます。
 
自治会、伝統行事を守る神社総代会、地域観光資源を守る地区観光協会、介護や子育てを支援するテーマ型コミュニティなど市民活動が盛んで、神社お寺が多いにも関わらず高齢化が進んでいる足利において、この制度は様々な可能性を秘めいています。
こういった課題を解決し、まちの魅力アップ、活性化につなげる中身の濃い事業とすべきだと考えます。

【参考】
地域おこし協力隊ホームページ → https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/
日光市 → https://www.city.nikko.lg.jp/tiikisinkou/gyousei/shisei/chiikiokoshi.html
益子町 → http://www.city.ohtawara.tochigi.jp/docs/2015041500011/