平成27年9月議会で一般質問させていただきましたが、あらためてこの事業について整理をしておきたいと思います。
 
足利市は歴史と文化のまちです。日本遺産に認定された日本最古の総合大学足利学校を抱え、室町幕府を開いた足利氏発祥の地でもあります。そして生産量日本一に輝いた足利銘仙を代表とした織物文化が、このまちを発展させてきました。このような本市のポテンシャルについては、市内外で高い評価を得ております。
しかしながら、本市の歴史についての対応は、歴史と文化のまちの名にそぐわない残念な部分が見られます。その一つが、『藤本観音山古墳保存整備事業』です。
藤本観音山古墳は全長約117メートルで、東日本では2番目、国内でも5番目に大きい前方後方墳です。前方後円墳のまるい部分が四角いものが前方後方墳です。また、周辺を取り囲む周溝という溝と建物跡などがあることから、両毛地域の古代史を研究する上で非常に重要であるということで、平成18年7月、本市で4件目の国指定史跡に指定され、高い評価を受けております。

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さてこの『藤本観音山古墳保存整備事業』が昨年まで、事実上休止状態であったというお話です。平成18年以降の経緯と予算執行額を以下にまとめました。

【藤本観音山古墳保存整備事業執行予算額】
H18/国指定史跡に指定
H19/1億1390万円 → 墳丘部にかかる住宅地公有化
H20/6218万円 → 墳丘部にかかる住宅地公有化
H21/2260万円 ※公有化が停止
    ・
    ・
H26/428万円 整備計画策定費
H27/0万円
 
■なぜ停止状態になったのか
史跡保存整備には、民間の土地を買収し公有化をしなくてはいけません。公有化をした上で道路にしたり、トイレを設置したりという整備が行われるわけです。その公有化が地権者との用地交渉が難航しているため中断しているということが理由だと、先日の議会で答弁がありました。
(※現地測量などは行われていました)
 
■公有化停止で起きる問題
史跡に指定された土地の住民の方は保存整備の過程で移転を余儀なくされます。移転の際に家の取り壊しが行われるため、その家にお金をかけることは無駄になってしまうと考えるのが一般的です。現在このエリアにお住まいの4軒のお宅はそれぞれ築30~60年で老朽化も進んでいます。2011年の震災の際に大きく痛んでいる箇所もあります。そんななかある程度移転の時期にめどがついていれば、それに合わせて生活設計をすることができます。しかし、上の予算経緯を見ていただいてわかるとおり整備のための公有化は平成21年を最後に停止してます。地域から見れば、もう6年以上整備が進んでないように見えるわけです。そうなると「整備事業は進まないのでは?」「いつになっても移転できない」といった声が出てきます。
 
◎移転のめどが立たないので家を修理することも建替えることもできない
◎震災でダメージをうけた危険な家に住み続けなくてはいけない
 
それ以外にも足利市が保有する貴重な史跡として、しっかりと保存整備を進めていかなくては、歴史観光資源が活用されずに埋もれてしまいます。東日本第二位の前方後方墳が、整備を進められず野ざらし状態というのは歴史と文化のまちとしては、あまりにも悲しいことだと思います。
 
◎貴重な歴史観光資源が活用されず埋もれてしまう


つづく...