最終回は足利市において博物館を整備することができるのか、するとすればどのようなものが望ましいのかを考えていきます。

まず足利市の財政ですが、人口減少に伴う税収減が予想され、決して裕福とは言えない状況です。平成31年に発表された「大型公共施設更新に向けた財政指針」には、現在の全基金(市の貯金のようなもの)の残高約79億円は、今後の急速に目減りし2025年枯渇するとされています。市民会館やゴミ焼却施設の更新を前に、新しい施設を整備するのは容易ではありません。

そこで、国の有利な支援制度を検討するべきだと考えます。例えば「歴史的風致維持向上計画(歴まち計画)」というものを策定することで、拠点整備補助が受けられます。計画が認定されれば補助率45%、更に立地適正化計画もあれば50%とかなりの割合です。国が歴史的なまちづくりを後押しする制度を用意しているわけです。歴史のまち足利のためにあるようなもので使わない手はないと考えます。
□歴史まちづくり(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/toshi/rekimachi/index.html

歴史まちづくりHP(国土交通省)

また、群馬県と違い栃木県は県立施設が宇都宮に偏っている傾向があります。群馬県にはこどもの国(太田市)や昆虫の森(桐生市)、県立美術館(館林市)など東毛地区にも県立施設があるにもかかわらず、足利市は市に移管した図書館があったくらいでほとんどありません。そこで、県内の均衡ある発展を目指す観点から、県内随一の文化財密度を誇る本市に県立博物館を整備していただくという考え方もあります。もちろん相手方のある事なので、十分な協議と強固なパイプが必要となります。

公共施設マネジメントの視点からは、市議会の公共施設建設・整備検討特別委員会でも議論された「足利市公共施設再編計画」を無視することはできません。
□足利市公共施設再編計画
https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/uploaded/attachment/58421.pdf
同計画によると、以前に紹介した郷土資料展示室などの3施設を中期(2026~2035年)で集約化するとし、「将来的には文化関連施設等の集約を目指す」とも示されています。私も同感で、複数の施設に分散し管理がしにくく、観光コンテンツとして弱い現状は打破すべきです。しかし、老朽化した施設にただ集約するのではなく、新しい施設を整備しそこに集約すべきだと考えます。3施設を新しい施設にまとめ、廃止施設は売却や賃貸運用により利益を生みます。特に郷土資料展示室は住宅街にあるため、ニーズも高いと考えられます。ディベロッパーに協力をいただき、コンビニなどに貸与することで年間数百万円の地代が上がります。
ちなみに、全体の延べ床面積縮減に繋がる集約化には「公共施設等適正管理推進事業債」という制度が利用できます。元利償還金の50%を地方交付税措置される有利な制度です。

次に足利市において博物館を整備するならどこに、どの程度に規模で、どんな展示をする施設とすべきなのでしょうか。これは考えが分かれるところですので、あくまで私個人の見解としてご覧ください。

■場所/史跡樺崎寺跡周辺(樺崎町)
一段の土地を確保できる広い場所で、歴史的資源のある樺崎であればコンセンサスも得やすいと考えます。以前に紹介した大日東については敷地が2700㎡しかなく、歴史的エリアかつ景観重点地区であるため、高層建築も難しい状況です。また、足利ICからも近く、樺崎寺跡と共に北の観光拠点として強化することで、まちなか(中央)、あしかがフラワーパーク(東部)と同地(北部)のトライアングルが形成され、観光回遊が進むと予想されます。

史跡樺崎寺跡は一般の方には価値が伝わり難い側面も

■展示内容/足利氏を中心とした足利市の全般的な歴史と、樺崎寺跡のガイダンス機能
樺崎寺に隣接していますし、足利氏は本市の重要な資源ですので欠かすことはできません。そのうえで本市の歴史を全体的に網羅した施設が望まれます。また、樺崎寺は史跡であるため、一般の方からは礎石や池があるだけでその価値を理解しにくいところがあります。それを補うためにもガイダンス機能は必須だと考えます。

■規模/3,000㎡
現在の足利市3施設の合計延べ床面積が約3,000㎡です。収蔵庫の収納を工夫するなどして、過剰な面積にはならないようにしたいところです。また、前回も述べたように所有文化財を活かしたビジネスができる事業者を募集して、施設一角を貸し出して収入を得ることも考えたいところです。(古地図カフェとか土偶スイーツなんて...)
ちなみにお隣の佐野市郷土博物館は2,154㎡ですので、それにテナントとガイダンス機能を足したくらいのイメージです。

お隣の佐野市郷土博物館

と、私の見解を述べましたが、いろんな意見を出し合って多くの市民が議論すべきだと思います。私が言いたいのは、

「足利市さん、いい加減に博物館の議論をちゃんとしましょうよ」

という事なのです。
この主張は議会の一般質問で何度もしてきましたが、「検討していく」の繰り返しでこの6年間の成果はありませんでした。私の力不足でありますが、歴史のまちの議員として非常に残念で仕方ありません。

引き続き諦めることなく、「歴史を大切にし、生かすことで、市民の誇りと経済効果を両立できるまち」を目指して精進して参ります。

長文お付き合いいただきありがとうございました。

【過去議事録】
□令和2年第1回定例会(3月)(史跡足利学校等の防災・防火対策)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=2325
□平成31年第1回定例会(3月)(歴史や文化財の活用)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=1941
□平成30年第3回定例会(9月)(文化財保存・展示施設)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=1874
□平成29年第2回定例会(6月)(歴史文化財保存・展示施設)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=1233
□平成28年第2回定例会(6月)(文化財の展示施設・閲覧システムの整備)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=779