博物館について規定している法律に「博物館法」があります。同法第1条には博物館の目的を以下のように示しています。

(この法律の目的)
第一条 この法律は、社会教育法(昭和二十四年法律第二百七号)の精神に基き、・・(中略)・・その健全な発達を図り、もつて国民の教育、学術及び文化の発展に寄与することを目的とする

また、文部科学省「博物館経営・運営のベンチマーク委員会」の報告前文には、その存在意義を以下のように示しています。

(2)博物館の存在意義
博物館活動の根幹は、資料と情報を集積し、展示や学習支援を通して広く活用に供するとともに、人類共有の遺産として次世代に伝えることである。そして、調査研究によって資料の価値を高め、人びとに正確な情報を伝えることが、博物館に対する信頼の礎となる。このことは、博物館が果たす独自の役割であり、社会情勢の変化に振り回されることなく、その役割を果たすことが人類社会に対する責務である。


歴史的資料を次世代に繋ぐことを根幹としつつも、国民の教育、文化の発展のために、展示や教育など様々な事業を展開することが求められる施設が博物館であり、その役割を社会情勢に左右されずに務めることを責務としています。
主として「保存」「教育」に力が入れられているように感じます。

しかし、博物館が果たす役割は「活かす」という視点を加えることで、さらに広がると考えます。

1.観光活用による効果
博物館に展示されている文化財は人を集める有効なコンテンツです。もっとも有名な上野の東京国立博物館は年間191万人(※1)、呉市の大和ミュージアムは96万人(※1)の入場者が訪れます。
世界的に人気がある運慶作の仏像も足利から発見されていますし、1ヵ月で約4万人を集めた山姥切国広のような刀剣も足利ゆかりの品です。また本市出身の書家、相田みつを美術館も年間46万人(※2)の入場者を記録しており、本市には多くの作品が残されています。こうした十分に活用されていない足利の宝を一体的に展示できる施設があれば、強力な磁石として観光客の皆さんに来ていただく事ができるのではないでしょうか。それだけでなく、しっかりとしたコンテンツを用意できれば、観光客の皆さんはそれぞれの地元やコミュニティでプロモーションを展開し、足利市のイメージアップにも繋がります。
(※1…2016年の入場者 ※2…2009年の入場者)

言わずと知れた東京国立博物館

2.歴史教育による郷土愛の醸成
まちの歴史を総合的に分かりやすく理解できる博物館は、教育コンテンツとしては大変有効です。古代から近代まで、まちがどのように変化してきたのか、自分たちの先祖がどのような道を歩んできたのか、それを言葉だけで説明するのは容易ではありません。現存する資料や絵図、模型、ガイドを通じてその重みや貴重さを理解することで、生まれ故郷に関心を持ち、それが誇りに繋がります。今までの様にただ展示品を見て回るだけでなく、学芸員や所有者・関係者の生の声を聞いたり、模造品を作ったりと体験型のコンテンツがあると、更に学びも深まります。
その結果、「○○市には何もない」「▲▲町はつまらないところだ」という故郷を卑下する言葉を減らすことに繋がり、それは地域活性の原動力となるはずです。

3.経済効果
観光による経済効果は入館料や周辺観光関連事業者の売上だけではないと考えます。例えば展示に協力してくれた文化財所有者(神社仏閣、個人など)へのフィーを支払い、それを文化財の修復などに繋げることができます。また、まだ事例は少ないですが所有する文化財等を生かしたビジネスも、民間のノウハウを借りて考えられるはずです。

「文化財×宿泊」事例は増加中。写真は那珂川町の飯塚邸。

「仏様や文化財を使って金儲けなんてけしからん!」

という意見もあると思いますが、残念ながら物は時間が経てば朽ちていきます。維持するにはお金が要ります。人口減少で財政が厳しさを増す中で、できる限り自力で稼ぐ方法を模索することは、持続可能な文化財保護を考えるうえで不可欠だと思います。具体的な方法については私自身もまだまだ研究中です。

つづく...

期間限定で上野に設置された「びわ湖長浜KANNON HOUSE」からは何かヒントが得られると感じた

【過去議事録】
□令和2年第1回定例会(3月)(史跡足利学校等の防災・防火対策)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=2325
□平成31年第1回定例会(3月)(歴史や文化財の活用)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=1941
□平成30年第3回定例会(9月)(文化財保存・展示施設)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=1874
□平成29年第2回定例会(6月)(歴史文化財保存・展示施設)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=1233
□平成28年第2回定例会(6月)(文化財の展示施設・閲覧システムの整備)
http://sueyoshi-toshihiro.com/?page_id=779