第3回は危機管理体制です。足利市の災害対応は「足利市地域防災計画」に定められており、危機管理課が属する総務部、消防本部等の防災関係各課が班編成をし、組織全体で対応します。そして市長を本部長とした「災害対策本部」を設置して全体の指揮にあたります。

足利市のホームページからダウンロードできる

□足利市地域防災計画
https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/bousaikeikaku2018.html
□関連する末吉の一般質問録画配信
http://u0u1.net/XI0O

しかし、今回の台風で防災体制の核である危機管理課の限界が明らかとなり、その課題を市は次のように分析しています。

⑴当該課を含めた関係各課が災害対応に追われ、中小河川の状況や市街地での内水氾濫などの情報が災害対策本部に届けられなかったこと。
⑵市民や各機関からの通報や問い合わせが殺到したことにより、情報の取捨選択に時間を要し、災害対策本部の決定に影響が生じたこと。
(※一般質問答弁より)

では、なぜこのような事態になってしまったのでしょうか。私は組織の体制に問題があると考えています。危機管理課は臨時職員含め5名体制です。他市に比べても多くない人員で、平時は防災訓練や災害啓発活動等を実施し、災害時は対応の最前線に立ちます。
発災当日は各所から被害状況等を伝える1400件以上のFAXが危機管理課に受信され、溜まり続けていました。電話も鳴り止まず、救助を求めるもの、市に対するお叱り、自治会や施設からの要望等、様々な問い合わせへの対応で職員が手いっぱいとなりました。その結果、災害対策本部に情報伝達や、適切な対応ができなくなりました。そして、電話の件数を数えることすらできなくなっていきました。
冒頭にあったとおり、各課が班編成に基づき、組織全体で対応することとなっていましたが、実戦でその課題が浮き彫りとなりました。

そこで今回は以下の4つの提言をさせていただきました。

■末吉の考え
1.災害時の危機管理課OB職員臨時配置
危機管理課にかかってくる大量の電話への対応は、複雑かつ業務量が膨大です。しかし、班体制に基づいて手伝いに入った不慣れな他部署の職員では判断ができず、危機管理課に確認をすることとなります。抜本的な業務軽減にはつながらないのです。そこで、危機管理課を経験したOB職員が、優先的に危機管理課の補助をできる体制が必要だと考えます。当局も「同時期に様々な問題に早急に対応しなければならない状況においては有効な方法の一つ」と前向きな答弁をしてくれました。

2.危機管理課へ副部長級配置など
危機管理課長は災害対策本部に詰めている時間が多くなります。その結果、現場での各課からの対応は、比較的立場の弱い主幹級となります。また、部長級が並ぶ災害対策本部でも、組織上目下の課長という立場では、適切な交渉がしにくくなります。ギリギリの判断をしなくてはいけない状況で、危機管理課が持っている情報や考えを、適切に伝えるためにも、課長の上に副部長級等を新設して災害対策本部に置き、課長を現場の指揮官とするなどの組織改正が必要と考えます。

3.退職自衛官の採用
災害対応能力向上に有効とされている手法の一つに、退職自衛官を自治体防災関係部局に在職させる方法があります。2016年には372名の退職自衛官が各自治体で活躍しています。採用により消防、救急、各課の部隊運用能力の向上、自衛隊や県などとの連絡調整能力の向上、災害発生時の初動の迅速化など、多くの効果が期待されます。
当局からは「県内の自治体でも行われていることから、その効果などを参考に研究する」との答弁がありました。
□退職自衛官の雇用について(陸上自衛隊)
https://www.mod.go.jp/gsdf/retire/bousaikan.html

4.防災体制立て直し担当職員の配置
本市の危機管理課は1課1担当ですが、今回の反省をもとに防災体制の立て直しが迫られています。非常に多分野かつ、部署をまたぎ、市民との共同作業も重くのしかかるこの課題を現体制で完遂することは困難です。今回の災害を経て、平時の業務は大きく増加します。そこで、新たに「防災体制見直し担当」のような専門セクションを設置すべきと考えます。これに対し市長からは「枠組みを充実させると同時に職員の人材育成と意識の向上が重要」との答弁がありました。

以上のように組織に関する細部にわたった提言をさせていただきました。人材も予算も限られていることは重々承知の上で、今回の経験を生かした体制づくりを今後も訴えて参ります。

つづく...