会派視察初日は旭川市の新庁舎建替えについて視察させていただきました。視察といっても今回の主眼は建替えまでのプロセスです。現段階の旭川市は基本設計が完了し、実施設計には取り掛かっている状況ですので、まだ庁舎が完成しているわけではありません。そこで、どのように市民や議会と合意形成をしていったのか、経費削減や効率的設計等の建設前段での工夫を学びたいと考えていました。

一般的に公共施設は以下のような手順で建設されます。
自治体や施設によって内容は変わりますが下記の順で進みます。

①基本構想=建設の意思、場所の候補、おおよその規模等
②基本計画=場所、事業費、おおよそのレイアウト
③基本設計・実施設計=具体的な設計

旭川の場合は、東日本大震災で庁舎の安全性に大きな注目が集まったことがきっかけでした。そこで①の前に「庁舎整備に関するアンケート」を実施しています。その結果、74.6%が「建て替えた方が良い」と答えました。これが建替えへの大きな推進力となったようです。その主体として庁内に「庁舎整備検討推進委員会」を設置し、内部にワーキンググループも組織されました。

基本構想、基本計画の段階では議会に「市庁舎整備調査特別委員会」が設置されました。それぞれ提言書が提出されますが、各会派の要望的な内容でありました。そのなかでも各会派の共通認識でのあるものは取り入れていきました。
ここで目を見張るのは市民への対応です。
一般的には数回の市民説明会や、コンセプトを考えるワークショップを実施して「市民の意見を反映した」としがちなところです。しかし旭川は、市内各団体との意見交換を基本構想で56団体、基本計画で77団体実施、市長との意見交換をするタウンミーティングを計6回実施、ショッピングモールや庁舎でのアンケート実施など実にきめの細かい対応を行われてきました。
過度に市民の方々の意見を聞きすぎると収拾がつかなくなるリスクもありますが、市民の誇りやシンボルともなりうる公共施設ですので、丁寧に合意形成をとっていくことは重要だと感じました。

また、旭川市も公共施設の維持管理は大きな問題となっていて、「旭川市公共施設等総合管理計画」では合計延床面積を40年で56%削減しなくては市の財政を維持できないとの試算が出ています。そこで新庁舎も、むだを省いた直方体のデザインと、最小の面積で設計されています。参考に栃木県佐野市の庁舎も視察されたようです。庁舎で取り入れがちな開放感のある吹抜けも最小限、中庭なども配置しない徹底ぶりでした。

全体レイアウトと概要

無駄のない外観と内部設計

しかしながら基本計画から基本設計に至る間に、大幅に事業費が増えたことで反発もありました。こうした計画ではしばしば見られることではありますが、ご経験から「いかに構想・計画の精度を上げるかが重要」「単価計算を実態に合わせて行う」などのご指摘もいただきました。

本市の庁舎も昭和49年竣工ですので築45年です。大きな課題となっている4大公共施設更新の陰に隠れていますが、本市行政機能の本拠地である庁舎建替えの議論も検討しなくてはいけません。財政的に大変厳しい状況ではありますが、先を見据えた議論を私たち議員が率先して行うべきだと再確認させられました。

日本建築学会賞も受賞している佐藤武夫氏設計の現庁舎